MENU

【書評】「働くことがイヤな人のための本」を読んだ感想

またまた、私が好きな中島義道氏の著書から。

タイトルからしてストレートなものですが、内容は実に奥が深い本です。

ただ、この本は、セミリタイアを指南する内容ではありませんし(通ずるところはありますが)、読んだら「明日から仕事をがんばろう!」という気持ちにさせてくれるような自己啓発的な励ましの言葉も載っていません。

むしろ、読むとますます働くことが虚しく、そしてますます働くことがイヤになる本だと思います。

その意味で、「前向き」な内容を期待して読むと、「なんだこれ?」という感じになるでしょう。しかし、そういう人は少なくとも「働かなければならない」という認識がある。だからこそ、働くのがイヤという気持ちを解決したいと思っているのでしょう。

この本は、そういう人向けではなく、働くことがどこまでも虚しく、このまま人生が終わっていってしまってよいのだろうかという「働く」ことと人生が表と裏のように感じている人にこそ読む価値がある本だと思います。

このまま仕事をだらだら続けてよいのか?

この本は、架空の4人の人物と著者である中島氏が対話をする形で進行していきます。架空の人物とはいえ、それぞれ中島氏の分身といってもよい人々です。

A:就職するのがこわく引きこもっている20代の大学生

B:仕事にも結婚にも価値を見いだせない30代の女性

C:人生半ばを超え、仕事に疑問を抱き始めた40代のサラリーマン

D:ガンの誤診をきっかけに人生について考え始めた50代の男性

いかにも存在しそうな人たちですね。特に私が共感したのが、CとDの男性です(私は20代なのですが!)

Cの設定は、次のようなものです。

社会から落後することが恐ろしいために、気乗りしない仕事を続けてきた。それになんの生きがいも喜びも感じないままに、ずるずると続けてきた。人生半ばを過ぎ、これからもこの仕事をだらだらと続けていってよいものだろうか?あと20年このつまらない仕事にしがみついて、さらに精気のない老後を迎えるのだろうか?

私も似たようなことを感じています。私の場合は、今20代ですので、このまま会社に勤め続けるとしたら残り40年ほどです。定年も延長になるでしょうから、何歳まで働くのかわかったものではありません。

今でも、会社に行くこと、仕事をすることが、虚しくてしかたがないのです。自分の人生とはなんの関係もないことに1日の2/3もの時間を費やし、別に売れようが売れまいがどうでもよいものを売ったり、どうでもよい書類を作ったり・・・。

そして?

そして、100年足らずそうして生きた末に死んでしまうのです。これはいったいなんなんだ!・・・という感じです。

このまましたくないことを何十年もしていくと考えると恐ろしくて仕方がない。できる気がしない。人生で「これをした」というものもなく死んでいきたくない。だからこそ、私は「セミリタイア」という道を目指そうとおもっているのです。

金にならない仕事へ

本書では、仕事にまつわる様々なことを語り合った後、最後に「金になる仕事から金にならない仕事へ」ということを著者が語ります。

詳しくは本書を読んでいただくしかないのですが、ざっくりと言えば「生きることそのことを常に優位に置くこと、生きることがそのまま仕事であるような、そんな仕事を求めるべき」と述べています。

なんだか分かったようで分からない感じですね。中島氏が哲学者であることから、多分に哲学的な意味合いを感じますが、私なりの解釈をすると、「生きることそのものの意味を考えること。限られた生の時間の中で、何をなすべきで何をなすべきでないか、そのことをよく考えること。そして、よく生きること。自分らしく生きること。それを目指す取組こそが、本当にするべき仕事である。」という感じではないかと思います。

金を得るという仕事ではなく、自分らしく生きることを目指すことという人生の仕事に取り組むべきということで、「仕事」の意味の転換をするのです。

興味のある方は是非一読を。

[rakuten no="9784101467238" shop="book" kw="働くことがイヤな人のための本 (新潮文庫中島義道"]