【書評】FIRE-最強の早期リタイア術-最速でお金から自由になれる究極メソッド
FIREに関する本が発売されていました。
それが、今回紹介する「FIRE-最強の早期リタイア術-最速でお金から自由になれる究極メソッド」です。
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最近、FIREに関する本の出版が相次いでいますね。リーマンショックを乗り越えた人が、近年の株高でFIREの実現に成功したケースが出てきていることもあるのではないかと思います(最近の”コロナショック”は大丈夫なのかな?)
日本でも、そろそろブームになるのでしょうか。この点については、私は懐疑的です。
というのも、そもそも日本では「働かざるもの食うべからず」的な価値観が強いこと。また、「世間体」という名の有形無形の抑圧が働く社会だということです。
とはいえ、だからこそ、そんな日本社会で「FIRE」することの価値はとても大きいと思うのです。そこに到達できるのは、既存の価値観を打ち破ることができたごく一部の限られた人だけなのだから。
基本メソッドはいつもの通りです
それで本書の内容ですが、FIREを目指すためのメソッドはこれまでのFIRE本と同じです。
- 節約すること
- 収入を増やすこと
- インデックス投資を継続すること
当然と言えば当然ですね。これまでいくつかのFIRE本を読んできましたが、改めて方法は決まっているということを実感しました。
そんな中で、本書に特有の内容がFIRE後の資産計画としての「利回りシールド」と「現金クッション」です。
「利回りシールド」と「現金クッション」
4%ルールの弱点
本書でもFIRE後の生活費については、「4%ルール」で賄うことにしています。4%ルールとは、資産の4%の金額を生活費に充てるように取り崩していくというものです。
ですので、リタイア時に必要な資産額は「年間生活費×25」となります。例えば、年間生活費が200万円であれば、5000万円の資産があればよいとなります。
過去のケースをシミュレーションすると、95%の確率で30年後まで資産が枯渇することなく生活できるそうです。
早期リタイアの場合は、30年後と言わずもっと長い期間ポートフォリオが維持される必要があります。
さらに、95%と言っても残り5%は失敗することを意味します。5%というと小さいような気がしますが、20分の1と思うと無視できないようにも思います。
この5%になってしまうのが、リタイア後すぐに株式市場が暴落してしまうことです。
インデックス投資の場合は、暴落しても売却せずに回復するまでもち続けることが基本戦略です。ところが、リタイア後に生活費を捻出するために取り崩すと、市場が回復したときに暴落分を十分に取り戻せません。
これが「4%ルールの弱点」とも言えるでしょう。
配当金と予備の現金で対応する
本書の著者もこの点を気にしており、FIRE成功の確率をさらに上げるために編み出した戦略が「利回りシールド」と「現金クッション」です。
詳細は本書に譲りますが、簡単に言えば高配当株式ETFなどを組み入れて、ある程度の配当金収入を得られるようにしておくということです。
株式が暴落したときは、まず配当金収入を生活費にあて、足りない金額は別に用意しておいた「現金クッション」から取り崩します。
この用意すべき現金クッションの金額は、以下のように定義しています。
「(年間支出-配当金収入)×5年」
例えば、年間支出が200万円、配当金収入が50万円とすれば、
(200万円ー50万円)×5年=750万円となります。つまり、インデックス投資や高配当ETFに投資した5000万円に加えて、750万円を用意しておきましょうということです。
なぜ、5年なのかというと、過去の暴落のケースで見れば長くても5年で回復しているからとのことです。
最長で5年の間インデックス投資分を取り崩さずに済むようにしておこうということですね。
私もインデックス投資を基本としつつ、HDVのような高配当ETFの積み立てをしているので、結果として著者と同様の行動を取っていることになります。
しかし、本書ではさらに体系的にシステム化しているのが特徴です。
- 平時は、インデックス投資分から4%分を取り崩す。
- 暴落したときは、利回りシールドから得た配当金と、現金クッションから取り崩したものを生活費にあてる(市場の回復を待つ)
- 市場が回復したら、インデックス投資からの取り崩しを再開し、余裕があれば現金クッションを補充する。
このような戦略はこれまでのFIRE本にはなかった特異な内容です。本来は、すべてインデックス投資に回すのが合理的なのでしょうが、やはり定期的に配当という形で現金が入ってくるのも精神的な面でも心強いものがあります、
そういった面でも、この高配当ETFなどを組み入れる、そして活用をシステム化して示したということで本書はとても参考になると思います。
一番大事なのは「時間」
本書では、このほか、著者がお金に対する価値観を培った生い立ちなどが語られたり(正直この部分はあまり興味がなかったですが)、早期退職の負の側面、子供がいる場合はどうするのか、世界を旅して生活費を浮かせる方法など、興味深いトピックも扱っています。
そんな中、私が関心を持ったのが、著者が紹介した次のようなエピソードです。
65歳でリタイアして世界旅行を夢見て、数10年間、懸命に働き続けた男性の話です。 その男性はなかなか踏ん切りがつかず、リタイアを先延ばしにし続けました。貯めたお金が十分ではないかもしれないという不安をぬぐい切れなかったのです。 「あと1年だけ」と働き続けました。結局、翌年も同じことを繰り返します。ところが、ついに彼の心臓が悲鳴を上げ、彼は職場のデスクで亡くなったのです。
このあと、彼の子どもが遺灰をブリキ缶に入れて世界中を旅してまわったという美談だったのですが、自分も「あと1年」症候群になりそうな気がして、他人事には思えなかったのです。不安な気持ちはとてもよく分かる気がするのです。自分もいざ決断するときには、やはり迷うだろうと。
でも、やはり、1番大事なのはお金ではなく「時間」です。人生という「有限の時間」よりも大事なものなどないのです。
たった一度の人生を愉しむこと、それこそが「FIRE」や「早期リタイア」の目的でもあるのですから。
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参考になる「FIRE本」です。