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【書評】「私の嫌いな10の言葉」から考えるこの世の欺瞞

今日は、中島義道氏の「私の嫌いな10の言葉」をご紹介したいと思います。中島氏と言えば、以前にこのブログでもご紹介した「人生を<半分>降りる」の著者でもあります。

私は中島氏の著書から大きな影響を受け、セミリタイアを考えるきっかけにもなりました。これまでの人生で、なんとなく「生きづらい」「周りと合わない・馴染めない」といった、モヤモヤしたものを感じていました。それが、中島氏の著書を読むと、そのモヤモヤを表現する的確な言葉が見つかったという感覚になったのです。

おそらく、中島氏の著書に出会わなければ、セミリタイアを志すことはなかったかもしれません。おかげで順調に社会から「転落」する人生が歩めそうです!(むしろ、出会わなかった方が「まとも」な人生を歩めた?)

その意味で、かなり影響の大きいものだと思います。読む前と後では、世界の見方が大きく変わってしまうでしょう。

嫌いな「10の言葉」

この「私の嫌いな10の言葉」では、中島氏が嫌いだという10個のフレーズが紹介されます。

  1. 相手の気持ちを考えろよ!
  2. ひとりで生きてるんじゃないからな!
  3. おまえのためを思って言ってるんだぞ!
  4. もっと素直になれよ!
  5. 一度頭を下げれば済むことじゃないか!
  6. 謝れよ!
  7. 弁解するな!
  8. 胸に手を当ててよく考えてみろ!
  9. みんなが厭な気分になるじゃないか!
  10. 自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!

どうです?確かに言われると嫌な気分になるような言葉ばかりだと思います。社会では、よく言われる言葉ばかりです。しかし、そこには欺瞞とウソがゴキブリのように這いまわっているのです。

中島氏は、それぞれのフレーズについてさらに掘り下げて考えています。その分析の鋭さは感心してしまいます。読んでいるこちらが、気持ちよくなるくらいの言いっぷりです。ある意味痛快です。

日本の、社会の、世間の欺瞞を見事に看破しています。詳しくは、本書を読んでいただくしかないのですが、今回はその中で、私が共感したところを少し引用してみたいと思います。

みんなが厭な気分になるじゃないか!

現代日本は、なんとこのフレーズに知らず知らずのうちに支配されていることでしょう。

人間の口から出る言葉をことごとく慎重に殺菌して、危険度をゼロにまで薄める。厳しい相互監視のもとに検閲を実行するのです。その結果、そこに現出する世界は和気あいあいとしたグロテスクそのもの!嘘で固めたうすら寒い薄汚い世界というわけです。
そこには「いい気分」を維持するために、莫大かつ周到な言葉の摘み取りが遂行されており、「いい気分」を維持することが最高原則になっている。・・・ですから、当然のことながら批判精神はことごとく駆逐される。・・・批判をすれば「みんなを厭な気分にした」という罪状が待っており、他方、黙っていればそれに賛同したとみなされる。これは暴力的状況です。

特に、付き合いたくて付き合っているわけでもない、会社の上司や同僚、ご近所関係、親戚関係、至るところでこの「検閲」は実行されています。そこでは、誰もが善良な社員であり、善良な市民であることが求められるのです。

みんなが「いい気分」でいるための和気あいあいとした雰囲気を維持するという「ゲーム」が延々と続くのです。それを平然とこなしてなんともない人もいますが、私などは辟易してくるのです。なんと息苦しいことか!まあ、それが「おとな」の対応だとは分かっているのですが、しかし、なんと心身の疲れることか。

もう、こうなっては社会から「隠遁」するしかなさそうです。早くセミリタイアしたいなぁ・・・

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