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36歳でリタイアしたローマ皇帝ティベリウスへの憧れと共感

今日は、私のペンネームにもしている古代ローマ皇帝ティベリウスのお話。

タイトルにあるように、ティベリウスは36歳のときに公職から離れてリタイアしています。今で言う「アーリーリタイア」とでも言えるでしょう。

彼は、その後56歳のときに先帝アウグストゥスの後を継いで、第2代皇帝となります。ですので、厳密にいうと皇帝としてアーリーリタイアしたわけではありません。

しかし、古代ローマ時代でも働き盛りと言われていた30代半ばにして、すべてをほっぽり出してリタイアしてしまうあたり、なんだか親近感を感じます。(私も早くリタイアしたい!)

皇帝一族のひとりでありながら、アーリーリタイアを望んだティベリウスとはどういう人物なのか、今日はご紹介したいと思います。

ティベリウスの実像

ティベリウスは、紀元前42年~紀元37年に生きた古代ローマ人です。 皇帝としては、紀元14年~37年です。 ティベリウスは、歴代のローマ皇帝の中でもすこぶる評判が悪い。業績としては大変成果を上げた人物ですが、皇帝としての最後の10年間はカプリ島という、ナポリ湾に浮かぶ島に引きこもってしまいます(これも、ある意味リタイア?)

引きこもったとはいえ、皇帝としての仕事は放棄したわけではない。側近や書簡をローマに送るというやり方で、統治自体は続けたのです。それで、うまくいったのですから大したものです。実は、若いころから仕事は大変できた人物のようです(私とは断然違う!)

こんな感じですので、ローマ市民やローマの元老院は無視されたと感じて大変不人気だったらしい。本当は、皇帝なんかしたくなかったのではないかとさえ思います。

そんなティベリウスがアーリーリタイアしたのが、36歳のとき。

彼は皇帝一族に連なるといっても、初代皇帝アウグストゥスとは血のつながりはありません。ティベリウスの母リヴィアが、アウグストゥスと結婚したことで一族になったのでした。つまり、ティベリウスは連れ子だったわけです。

その後、皇帝一族の一員として公職を歴任。軍団での軍務も卒なく果たしていたようです。そんな彼が、36歳のとき、突如としてリタイアしてしまうのです。

ロードス島でのリタイア生活

36歳で突然リタイアした理由は判然としていません。

政略結婚させられた妻との不和から逃れてとか、アウグストゥスの実の孫とのライバル関係に嫌気がさしてとか言われています。皇帝の妻の連れ子ということで微妙な立場だったのかもしれません。

まあ、いろいろと嫌気がさしたのでしょうね。皇帝一族という肩書も公職もすべて捨ててのアーリーリタイアでした(うらやましい!)

継父アウグストゥスと実母リヴィアの反対を振り切ってのことだったらしい。

そんな彼がリタイア先に選んだのがギリシアエーゲ海に浮かぶロードス島という島。

「バラの花咲く島」という意味らしいですが、気候温暖で風光明媚な島らしい。のちに皇帝として引きこもるカプリ島も地中海に浮かぶ優雅な島らしいですから、ティベリウスはそういうところが好きだったのでしょう。

では、どんなリタイア生活を送っていたのか。皇帝一族だからといって、いわゆるセレブみたいな生活をしていたわけではありません。

塩野七生「想いの軌跡」から。

ロードス島でのティベリウスは簡素で質素な生活を送った。ローマ帝国の支配者の一族としての待遇も嫌い、ローマの高官中の高官の前歴も捨てて生きることにしたのだ。 一介の世捨て人だからと、島に立ち寄って彼に敬意を表しようとする人々の訪問さえもひどく避けようとしたらしい。 歴史書を読むこと。数人の友との気の置けない会話。そして、長い長い散策。

私から見ると、理想的なリタイア生活のように思えます。私の場合は、とりあえずセミリタイアということで、ある程度働くことを想定していますが、基本的にやりたいことはティベリウスと同じ。

簡素で質素な暮らしでいいから、静かで穏やかな日々を過ごしたい。本を読んだり、散歩をしたり。余計な人間関係を捨て、仕事や世間のしがらみもすべて捨てて・・・

その後のティベリウス

ティベリウスのアーリーリタイア生活は7年続きます。

この間に皇帝アウグストゥスが後継者にと見込んでいた血のつながった孫が相次いで亡くなってしまったことで、ティベリウスが消去法的に後継者と見込まれることになったのです。

そこで、アウグストゥスに呼び戻され公職に復帰します。そして、アウグストゥスの死後、第2代皇帝となるのです。

前述の塩野七生さんは、ティベリウスにも皇帝になる野心はあっただろうと述べています。鳴かぬなら鳴くまで待とうではないですが、ライバルが退場するというのを忍耐強く待っていたのだと。

でも、個人的にはティベリウスは皇帝になりたいという野心を持つようなタイプではなかったのではないかと思います。ロードス島に隠居した時点で、本当に引退したかったのだと思うのです。

風光明媚なエーゲ海に浮かぶ島での質素で簡素な生活をするということは、そういうこと。そんな生活をしていたら、「普通」に戻れるとは思えません。

ティベリウスの場合は、皇帝一族ということで特別な事情があったこと、「パブリック」の意識の強かったローマ人ということで、運命に抗えず、やむを得ず公職に復帰したのではないか。あくまで、私の想像ですが。

もし、皇帝一族ではなく、普通の貴族とかであれば、そのままロードス島でのリタイア生活を続けたんではないかなあ。

いつか、アーリーリタイアの先輩のティベリウスが愛したロードス島カプリ島に行ってみたいですね。

私も、セミリタイアしたら瀬戸内海あたりのどこかの島に引きこもろうかな。地中海ほどの優雅さは期待できませんが・・・

[rakuten no="9784101181431" shop="book" kw="想いの軌跡 (新潮文庫) 塩野 七生"]