【書評】『グッドフライト・グッドナイト』~空は自由の象徴~
人はなぜ空に憧れるのだろう。
それは、きっと空が「自由」の象徴だからー
著者がそう語ることには、とても共感できる。空ならば、何にも縛られず、上下左右に自在に動き回ることができる。空ほど、自由を体感できるものはないだろう。
私も、セミリタイアしたいと思ったのが、単純に「キレイな空を見たい」と思ったからだ。日々、会社に行き、仕事に追われていると、キレイな空も純粋な気持ちで見ることができなくなる。心に余裕がないからだ。会社から、仕事から解放されて、ただただキレイな青空を眺めることができたら、どれだけ気持ちがいいことだろうと、いつも通勤途上で考えてしまう。
この本は、そんな私を、広大で懐深い大空へ連れて行ってくれた本だ。
パイロットが誘う最高の空旅
この副題が示すとおり、この『グッドフライト・グッドナイト』(原題:SkyFaring:A Journey with a Pilot)は、現役のパイロットであるマーク・ヴァンホーナッカーによるエッセイである。
著者は、現役パイロットとして、ボーイング747(いわゆるジャンボジェット)を操縦し、世界を飛び回っている。
本著では、そんな著者がパイロットの視点から、空旅へ案内してくれる。操縦にまつわるあれこれはもちろんのこと、機体(マシン)のこと、空気のこと、水のこと、様々な出会いのこと。
読んでいると、コクピットからの風景が想像しながら読むことになる。どこまでも続く海や、大地、砂漠、そして都市の上空から見える人間の営みまで。
私が、とてもよかったと思ったのが、著者が夜のフライトが好きだと述べていたことである。
夜間飛行は、低い雲の下にある日常生活やそれにまつわるさささいな悩みを忘れさせてくれる。 闇が支配する時間に、光の文字で記された本のページのような地表を眺めていると、夜間飛行は、人間が地上に生んだ光の美しさを再確認するだけのためにあるような気がしてくる。生きとし生けるものすべてが星々に包まれていることを、思いだすために飛んでいるように思えてくる。
そのほかにも、単純にパイロットや飛行機を運航する”裏側”や”日常”を知ることもできる。例えば、飛行機のクルーはいつも同じメンバーではなく、当日初めて会う人同士で、チームを組むことがほとんどらしい。そして、フライトが終われば解散。だいたい同じメンバーでチームワークよくやっているのかと思いきや、意外と即席のチームだったりするのだ。
ほかにも、意外と東京で食事を楽しんでいたりもするのが微笑ましい。
「ディ・サイド」コールは人生にもある
私が、興味を持ったのは、飛行機が着陸するときに、かかるコールである。それが、「ディ・サイド」コールである。
これは、いわゆる「決心高度」を知らせるもので、「空」か「地上」かを選んでください、決心してくださいというコールである。この高度までなら、着陸せずにもう一度空へ戻ることができる最終ラインということ。この高度を下回れば、もう着陸するしかない、そういうポイントだということ。
思えば、人生とは常に決断を求められている。決心すれば、もう戻れない岐路がたくさんある。しかし、一方でそれが人生の行く末を決めてしまう「ディ・サイド」ポイントであることには、あとから気づくことが多い気がする。人生にも「ディ・サイド」コールがあれば、もっと慎重に決断していたのにと思わなくもない。
セミリタイアにも「ディ・サイド」ポイントがあるような気がする。会社を辞めるときには、明日から辞めます!ってことはなくて、12月いっぱいでとか、3月いっぱいでという形になるに違いない。それを見越して、少し早めに退職を申し出るのだろう。申し出たとしても、まだ引き戻せる、会社員人生を続けることができるタイミングがあるのかもしれない。それが、セミリタイアの「ディ・サイド」ポイント。
「決断してください。会社かセミリタイアか」そんなコールが鳴るのだろうか。今はまだ先の話と思っていられるが、その時分になるとかなり大きな決断になりそうな気がする。会社を辞めるってかなりエネルギーを使う決断になりそうだ。
「自由」な空を目指して走り続けよう
空への旅は、人生の旅のようだと感じられた。どうしても、「空」=「自由」=「セミリタイア」と読んでしまう自分がいた。
私の今の時期は、きっと自由な空へ飛び立つための準備をしている飛行機のようなものだろう。空へ飛び立つためには、十分な助走をつけて飛び立つ必要がある。それが、「セミリタイア計画」なのだ。
まぁ、たぶんまだ滑走路にも入れていない。走り出すための”燃料”を積んでいる段階だ。「資産」という燃料をいっぱいに詰め込んで、必ずや自由な空へ飛び立ってやる。
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